DeNA、配車アプリMOVのゼロ円タクシー戦略の背景を考える

DeNA、配車アプリMOVのゼロ円タクシー戦略の背景を考える

今回は、DeNAの配車アプリ、MOVの面白い取り組みを紹介、そしてビジネス戦略上どのような背景があるのか考えてみたいと思います。

配車アプリと言えば、LINEタクシー、UBER、全国タクシーなど大手各社が参入する競争が激しい新市場の領域。

ゼロ円タクシーは顧客獲得戦略として、他社との差別化につながるのでしょうか。

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DeNAの配車アプリ、MOVのゼロ円タクシーキャンペーンとは

2018年の年末にかけて行われたキャンペーンで、期間中、50台の該当タクシーを手配することができれば、乗車賃はゼロ円というキャンペーンです。

タクシーって便利だけどちょっと高い。0円タクシーは、そんな常識を覆す新しい乗車体験を提供します。”食”の未来を創る日清食品と、”移動体験”の未来を創るMOV《モブ》がコラボレーションすることで、0円タクシーを実現しました。

出典:https://m-o-v.jp/project.html

具体的にどんなキャンペーンかというと、

・日清のどん兵衛とコラボ、タクシーの外見がどん兵衛に装飾

・タクシー台数は50台、実施期間は2018年12月5日(水)13:00 〜 2018年12月31日(月)22:00

・移動対象範囲は東京23区内に限定

・期間限定(6日間)の間は、どん兵衛の無料提供もあり。

そのほか、Twitterでのキャンペーンもあり

・どん兵衛タクシーを写真で撮り、Twitter投稿で抽選10名に1万円分の乗車クーポン

・MOV公式アカウントのリツイートで、抽選で100名に1000円分amazonギフト券

タクシーの乗車料がマーケティングによってコストがゼロになるという戦略は面白いですが、実際の効果はどうだったのか、みていきたいと思います。

日清にとってメリットはあったのか。

さて、今回パートナーである日清にとってはメリットはあったのでしょうか。

結論から言うと日清にとっては費用対効果を総合的に考えると宣伝効果はあったと言えるでしょう。

具体的に数字で考えていきます。

一番の効果は、インターネットを始めとするメディアでの取り上げ効果です。

具体的にGoogleで「ゼロ円タクシー」と検索してみると

検索結果は、770万件。これだけ多くのメディアに取り上げられている証拠です。

そして、大手のビジネス系のメディアにもキャンペーンの内容が取り上げられています。

大手メディアのPV数は1日なんと1000万PVを超えるところもあり、インパクトの大きさが理解できます。

東洋経済オンライン/3.5億PV(自社PV53%)1日約1160万PV
AERA dot./2.3億PV(自社PV38%)1日約760万PV
週刊女性PRIME/1.7億PV(自社PV43%)1日約560万PV
女性自身/1.6億PV(自社PV40%)1日約530万PV
文春オンライン/1.5億PV(自社PV35%)1日約500万PV

出典:ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2018/10/post_25139_2.html
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具体的な数字は概算でしか出せませんが、少なくとも宣伝効果だけでリーチできた数は仮定として大手10メディア、1メディア当たり10万PVとして100万人規模へリーチはできたのではないでしょうか。

そして、次にTwitterの宣伝効果ですが、以下の通り約7,000リツイート、1,300いいねです。

概算として、約7,000人近くがアクションを取ってくれ、その7,000人のフォロワーが認知したとすれば、1人当たり平均フォロワーを50人、フォロワーが見る確率が10%として

7,000 X 50 X 10% = 35,000

このように考えると、ツイッターでの拡散効果よりも、メディアで取り上げられる方の方が圧倒的に宣伝効果があることが理解できます。

日清、DeNAが負担したキャンペーンのコストはいくらだったのか

宣伝効果としては、十分にインパクトがありそうでしたが、次にコスト面について考えてみたいと思います。

今回のキャンペーンで負担すべきコストは主に乗客の費用負担です。

タクシー台数:50台
1日当たり乗車人数:10人 (1時間に1人として)
平均移動コスト:1,500円
稼働日数:25日間

50 X 10 X 1,500 X 25 = 約 1,900 万円

乗車コストだけでも2,000万円近くコストがかかっています。

このコストを日清とDeNAの費用負担を分けることが考えられますが、私は今回のキャンペーンはDeNAが多めに負担しているのではないかと思っています、もしくは日清はコスト負担していないかもしれません。

と言うのも、今回の取り組みは新たな取り組みであることと、日清は自社でブランドが確立している大手で、CMなど他にもたくさんの広告手段はあります。

そんな中手を組んだのですから、日清にとっては何かしらの強いメリットがあったはずです。

日清にとってみれば、ゼロ円タクシーという形でメディアに取り上げられれば、大きな宣伝効果になっているはずです。

そして、DeNAにとっては、日清のブランド力を活用して、約100万人にリーチできたとすれば、コストとして考えてみれば安いはずです。

DeNA、MOVにとってはメリットがあったのか

DeNAにとっては、何よりMOVのアプリをダウンロードして、使用してもらう必要があります。

KPIとしては、アプリのダウンロード数でしょう。

今回のキャンペーンでどれだけのダウンロード数を獲得できたのか、いくらリーチができたとしてもダウンロードに結びつかなければ今回のキャンペーンは成功とは言えないでしょう。

配車アプリの難しい点は、実際の認知からダウンロードまでの隔たりが、かなりありそうだということです。

障壁としては、以下のような点が考えられます。

・アプリをダウンロードしなければいけない

・利用するまでに決済情報の入力が面倒だということ

配車アプリを使ったことがないのでイメージが湧かないこと

無料タクシーを配車できるかどうかは分からないということ

今回のキャンペーンでダウンロード数に至ったコンバージョンは、高くないのではないかと思っています。

理由として、上記の通りタクシーをアプリで使うという行為自体が新しいということ、その他の障壁があるからです。

一方で、配車アプリMOVという存在があること、一定の認知度の向上という点では一定の効果はあったと考えられます。

配車アプリの難しい点は、顧客獲得に多大な労力がかかる、こんなところにビジネスの難しさがありそうです。