ピーバンドットコム(3559)、事業分析、ビジネスモデル、強みと成長可能性
- 2018.04.21
- 株式投資

ピーバンドットコム(3559)の株価、業績、売上高等を分析、考察しています。(※2021年2月1日、数字関連を追記)
まずは、客観的に事業内容を精査する前に実績値としての数字を見ていきたいと思います。
株価関連情報
(調査日時:2021/2/1)
時価総額:44億円
PER(予):34.25倍
PBR:4.06倍
時価総額は、50億円以下の水準、PERの予想が、30〜、PBRが4倍近くなので、利益水準や資産規模に対して株価は割高の可能性があります。
売上高推移
(単位:百万円)
2016年:1,717
2017年:1,830
2018年:1,995
2019年:2,106
2020年:2,133
売上高は緩やかに右肩上がりで成長していますが、成長率としては2桁台ではないので、急激な成長という形ではなさそうです。
営業利益推移
(単位:百万円)
2016年:59
2017年:230
2018年:286
2019年:297
2020年:247
営業利益に関しても、成長はしておらず、直近は減益しているので、変化があれば、追加の調査は必要でしょう。
当期利益推移
(単位:百万円)
2016年:61
2017年:159
2018年:221
2019年:236
2020年:111
当期利益に関しても、営業利益と同様のことが言えます。調べられる範囲ですが、2012年から赤字は一度もないので、このポイントはGoodと言えます。
ROE推移
(単位:%)
2016年:32.6
2017年:27.6
2018年:27.7
2019年:22.9
2020年:9.9
20%〜30%台とROEに関しては、素晴らしい数字を出しています。2020年に関しては、利益水準が低下したことによって二桁台ではなくなっています。もともとアセットが少ない形で、利益を出せる構造だと思われるので、ビジネスモデルは良いと思います。
有利子負債推移
(単位:百万円)
2016年:9
2017年:-
2018年:-
2019年:-
2020年:-
有利子負債もないので健全でしょう。
現金等推移
(単位:百万円)
2016年:182
2017年:593
2018年:790
2019年:816
2020年:987
現金は堅実に、増やしている模様です。この会社規模で、投資をそこまで必要としない業態で、10億円近くあるのは安心材料と言えるでしょう。
キャッシュフロー推移
営業活動のキャッシュフロー
(単位:百万円)
2016年:48
2017年:203
2018年:195
2019年:13
2020年:227
2019年に大幅悪化しているのが気になります。水準としては、2億円前後というところで推移しています。
投資活動のキャッシュフロー
(単位:百万円)
2016年:17
2017年:-7
2018年:11
2019年:26
2020年:-14
思った通りで、投資がそこまで必要のない業種・業態です。
財務活動のキャッシュフロー
(単位:百万円)
2016年:-29
2017年:215
2018年:-9
2019年:-14
2020年:-41
特に注目すべき数字はありません。
フリーキャッシュフロー
(単位:百万円)
2016年:65
2017年:195
2018年:207
2019年:40
2020年:212
もともと投資自体をそこまでしていないため、儲かった利益がそのまま現金と積み上がる構造になっていて、そのため現金等の保有残高が規模は小さいながら着実に積み上がっています。
ピーバンドットコム、事業内容
(※以下の記事は、2018年4月に執筆した内容です)
事業内容は、プリント基板のマーケットプレイスP版.comを中心とした、GUGENプラットフォームを運営しています。

プリント基板とは何か。
プリント基板とは、ICや抵抗、コンデンサなどと同様に、電子機器のための重要な電子コンポーネントの一つです。ウェアラブルデバイスなどの小型IoT機器からサーバ、医療機器、産業ロボット、自動車、航空機に至るまで、ありとあらゆる機器において使用されており、今やどんな電子機器もプリント基板なしでは作れなくなっています。
全ての電子機器に組み込まれている電子コンポーネントの一つですね。そう考えると、市場規模は巨大であることが分かります。
当社が提供するP版.comは、プリント基板を注文したい顧客と製造者をITを活用し、効率的に繋ぐプラットフォームです。
プリント基盤製造の課題を解決
プリント基板は、製品ごとに全て異なり、全てがオーダーメイドという特徴があります。そのため、従来の商習慣では、問題がありました。これまでの顧客とメーカーの商習慣では、課題がありました。
定価がなく、メーカーの言い値
高額なイニシャル費用
納期は工場ラインの繁忙状況に左右
纏まった枚数がないと受け入れられない出典:当社決算資料より。
立場上、顧客は弱い立場にあり、メーカー主導型の商習慣が基本的だったことが窺えます。そこでP版.comは、使用によって価格が自動計算される仕組みを提供する仕組みを提供。
これまで課題であった、メーカーの言い値を解消し、イニシャル費用が無料になり、仕様によって納期が決まり、1枚から注文可能となりました。
このサービスかなり革新的であることが理解できます。
プラットフォーム型のビジネスは、インターネットを活用して、情報の非対称性を解消し、これまで弱い立場出あった一方の課題を解決することにあることで価値提供ができるというメリットがあります。
P版.comは顧客目線で、業界の課題を解決するサービスであり、顧客からすると大変ありがたいサービスであることが分かります。
一方で、提携先のメーカーにとっても、ITによって見込み顧客を効率的に集客でき、価格交渉の手間が減るのであればメリットは大いにあると思います。
もちろん、これまで情報の非対称性から、適正以上に利益を上げてきた企業などは、淘汰されると思いますが、適正水準で早く生産できる企業にとっては大いにメリットがあるかと思います。
この会社の凄いところは、従業員の少なさ、なんと正社員が17名しか居ません(平成29年3月時点)、ITプラットフォーム提供に特化しているので、アセットライトであることが分かります。
ピーバンドットコムの成長性
まず、プリント基板の市場規模は、約6,000億円で横ばい、P版.comは18.3億(平成28年3月)と、約0.3%のシェア。これだけ見れば、マーケット全体は横ばいだが、まだパイは取れそうであることが分かります。
厳密にP版.comの顧客が、開発初期段階で量産体制が始まる前の試作品に特化していることがあるので、市場規模は小さいかもしれないが、それでもポテンシャルは高いと考えられるでしょう。
今後、量産化の領域まで手がけることができれば、成長ポテンシャルは大きいですが、他社競合との優位性をどうやって築くことができるかが課題となりそうです。
また、当社事業は、現時点でP版.comがメインとなっているが、モノづくりを加速するバリューチェーン全体に仕掛けを作っている点も興味深いです。
当社が考えるモノづくりの流れとは、
IDEA>設計情報>設計>製造>実装>筺体>完成>市場
であり、それぞれに対してサービスを提供している。以下紹介しおます。
アイデア・技術情報を提供するサービス(https://www.atmarkele.com/)
ハードウェアを作りたい人と技術者をつなぐプラットフォームを提供(https://crowd.gugen.jp/)
製造・製品化マーケットプレイス(P版.com)
完成後、市場へローンチするための広報・イベントを実施(GUGENコンテスト)
また決算説明資料に書かれている通り、IoT時代の到来に合わせて、当社サービスの事業を拡大させていく戦略がみてとれます。
確かに、色々な商品のIoT化が進むことは予想され、既存の商品以外の新規事業として各社ともに、テスト製品の開発、製造はますます拡大していくことが予想されます。
GUGEN Crowdと呼ばれる、開発者と発注者を繋ぐプラットフォームも世界を視野に入れているようで、この点も面白いです。
最終的には、既存の国内工場や海外工場を利用し、製造業のSPAの実現も目指しているので、ここが実現できれば高い成長が見込めるのではないでしょうか。
成長ストーリーは十分描けることが分かりましたが、参入障壁を築けるか、他社に比べて優位性をどうやって築いていくかということが大きな課題となりそうです。
過去の業績から、ピーバンドットコムの経営は堅実であるか。
売上高は順調に伸びています。一方で経常利益はあまり伸びていなかったのが、前期に利益率が改善、これはコスト削減努力が功を奏したことが影響しています。
成長のスピードに関しては、一定水準で伸びているものの、加速度的に伸びているとはあまり言い難いかもしれません。
ピーバンドットコムの財務は健全で余裕はあるか。
財務状態は健全ですね、有利子負債がなく、上場した資金もあり、問題なさそうです。
ピーバンドットコムのビジネスモデルに優位性はあるか。
ここは難しいポイントです。Googleでプリント基板見積もりと検索しても、いくつか他社サイトが出てくることから、競合はいくつか存在しています。
当社としても競合の存在は認識しており、リスクとして認識しています。
競合大手としては、この会社でしょうか。フリージア・オート技研株式会社(https://www.pban-a.com/)
先行者優位はあるものの、圧倒的なポジションを取れているかは定かではありません。
アイデア自体はとても分かりやすく、課題解決を促しているため、新規顧客の多くが既存顧客からの紹介というところも、サービスの質の高さがあるのかもしれません。
ただ、オンリーワンではないだけに、どう差別化していくかという点が今後の成長を左右していくでしょう。
成長への継続的投資を実施しているか。
新規事業は積極的に投資している模様ですが、どちらかというと現時点では既存の主力事業である、P版.comの成長に注力している様子です。
優秀な経営陣はいるか。
代表取締役 田坂正樹
経歴:
1995年 3月 多摩大学 経営情報学部卒業
1995年 4月 株式会社ミスミ入社
2000年 3月 同社退社
2000年 4月 株式会社ブレイク・フィールド社 取締役就任
2002年 4月 当社設立、代表取締役就任(現任)
2011年 7月 gcストーリー株式会社 取締役就任出典:当社HPより
インタビュー記事がネット上にありました。元々学生時代に鳶職に就き、その後ミスミ社では、改善すべきことを積極的に提案していたこと、新規事業開発に従事していたことを読むと、ベンチャーマインド旺盛だったことが窺えます。
その後起業に至ってからのストーリーでは、プリント基板の通販のビジネスモデルがなぜ良いと考えたのか、インタビュー記事に記載されていました、創業期にここまでロジカルに発想していたとは凄いです。
1つは、法人向けであること。個人の嗜好品のように爆発的なヒットはなくても、安定した需要が見込めます。2つ目は、オーダーメイドであること。在庫を持つと大変なコストがかかります。3つ目は、質量が大きいもの。軽くてふわふわした大きい商品、例えば発泡スチロールだったら、送料などのコストを吸収しづらくなります。
4つ目は、リピート性が高いこと。車のように5年に1回しか買わない商品なら営業の仕方も変わります。そして、5つ目は、世の中にまだないものであること、です。
出典:人と企業をストーリーでつなぐ LISTEN【リスン】https://listen-web.com/masaki-tasaka/
優れたビジネスモデルは何かと考える上で、とても勉強になります。
組織としては、一括新卒採用をしない方針、COOは元ミュージシャンだそうな。多様性を重んじる文化があること。
また新規事業を組織の中で挑戦する風土も積極的に作っていきたい模様で、ベンチャーらしさがとても残っている組織であることが窺えます。
ご本人は、世界で必要とされるような人材となりたいと語っていることから積極的な海外展開が今後見込まれる可能性もあります。
分析コメント
良い点:
・マクロ環境は横ばいだが、全体に当社の占めるパイは伸ばせる余地はありそう。
・新規事業にも挑戦しているが、現時点では既存事業の成長に注力。
・アセットライトで組織も小規模なので、効率的経営を実施している。
懸念:
・競合が何社かいる領域なので、その点が懸念点。
・どれだけ伸ばせるマーケットなのか、ポテンシャルが分かりにくい。
・現時点の成長ストーリーでは、株価は割安とは言いにくい水準。
テンバガー可能性
「D」評価です。
時価総額が50億以下と低水準であることは良いポイントなのですが、客観的に数字で判断した時には、直近の成長性の低さは気がかりになるところ。テーマ性だけで人気化することはあるかもしれないのですが、確率は低いのではと思われます。
※「S」、「A」、「B」、「C」、「D」の5段階で勝手に評価した場合です。
参考:お金を増やすためには、元手となる種銭を早く作り、複利の効果を享受する
少額でもコツコツ投資をしながら、実践を積み重ねることを前提として、企業調査には、力が入ります。スクリーニングにかける時間も変わってくるでしょう。
※本記事に掲載されているコメントは、あくまで個人的見解に基づくものです。特定銘柄への投資を推奨するものではありません。また記載事項個人の調査に基づくものであり、100%正確であるとは限りませんので。くれぐれも投資は自己責任でお願い致します。
[…] 私が興味を持っている上場企業の例でいうと、このブログでも紹介した、Robotic Process Automationに関わる「豆蔵ホールディングス」や、プリント基板の製造・開発・実装を格安で提供する「ピーバンドットコム」なんかはこのテーマに該当する。興味がある人はリンクから記事を読んでもらいたい。 […]
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